これは伺か・伺的 [第1会場] Advent Calendar 2024、10日目の記事です。
書いているのは小戸らでくです。
私がゴーストのトークを書くときに考えてることを書いてみたので公開します、という記事です。
チョコレイトボックスはその辺の地雷系女子・さゆるとゆるく雑談するゴーストです。特別な世界観やストーリーはありません。
想定するユーザ像は「画面の前のあなた」で、なるべくユーザさんの年齢や性別を描写しないようにしています。しいて言えば幼いユーザさん(小学生とか)はあまり想定していません。
トークについて、日常的な雑談になるよう心がけています。ゴーストが言いたいことを言ってるだけのトークが多いですが、キャラクターが常にユーザさんに向かって話しかけていることを意識しています。
キャラの口調について、生っぽさを最も重視しています。頭に浮かんだことをそのまま出力していそうな話し言葉の雰囲気、と言い換えられるかもしれません。
調子乗ってんじゃないわよはクラスの意地悪な女子・紫ノ宮に校舎裏に呼び出されいびられるゴーストです。ステレオタイプな2000年代少女漫画風の世界観設定があります。
想定するユーザ像は「おとなしくて目立たないけど光るものがあるタイプの女の子」で、これもステレオタイプな少女漫画の主人公のイメージです。
トークについて、ユーザさんに意地悪を言いつつもどこかまぬけさが出るように意識しています。性格の悪いキャラではあるものの不快なゴーストにしたいわけではなかったので、親しみを持ってもらえるようにそうしています。
キャラの口調について、漫画っぽいキャラクター性が出るようにしています。女言葉で「キィ~」「おほほほほ」と言うような、フィクションらしくデフォルメされた口調です。
魔女と聖女は魔女とされる女性・レリート、聖女とされる女性・リィスと森の中で出会うゴーストです。中近世ヨーロッパ風のファンタジーな世界観で、ストーリーというほどではありませんがちょっとしたイベントがあります。
想定するユーザ像は「素直な若い村人」で、悪い噂に惑わされることがありつつも、自分に非があれば謝罪する人物としています。
トークについて、世界観を感じてもらうために日々の生活を見せるトークを多くしています。現代日本とは倫理観が違うために、キャラがやや古い価値観の言動をすることも多いです。
キャラの口調について、他のゴーストと比べてややかためにしています。ファンタジーな異世界が舞台かつ比較的シリアスな内容を含むゴーストなので、砕けすぎた表現を使っても雰囲気が壊れそうなことが理由です。
あなたを愛していますは愛猫を愛し愛されるゴーストです。特別な世界観やストーリーはありません。
想定するユーザ像は「画面の前のあなた」で、ユーザさんに関する情報はなるべく削いでいます。ただし猫のことは確定で愛しています。
トークについて、「愛されて育った愛情深い猫」であることを意識してとにかく愛情を表現するトークを書いています。
キャラの口調について、外国語を直訳や機械翻訳したような言葉づかいにしています。実際に人間の言葉を話しているわけではないということの表現です。
ふたりきり登校班は同じ小学校の女の子・舞穂子と2人で登校しながらおしゃべりするゴーストです。特別な世界観はありませんが、学校まで距離のある田舎の地域が舞台になっています。
想定するユーザ像は「小学校高学年の子供」で、年下の面倒見がいいお兄さん・お姉さんをイメージしています。
トークについて、できる限り子供らしい内容を選んでいます。通学中なので学校に関するものが多くなっています。
キャラの口調について、生っぽさ重視なところはチョコレイトボックスに似ていますが、口の達者な小学生らしい話し方になるように意識しています。
らぁちゃんとわたしは親友の女の子・らぁちゃんと放課後ハンバーガー屋さんでだべるゴーストです。特別な世界観はありませんが、街中のハンバーガー屋さんが舞台になっています。
想定するユーザ像は「らぁちゃんと仲良しの中学生の女子」で、ユーザさんはらぁちゃんがハートに見えるくらい彼女のことを好きです。
トークについて、中学生らしい日常トークと、思わせぶりな雰囲気のトークが多いです。2人の間に恋か友情かわからない感情を置きたかったので、その表現です。
キャラの口調について、このゴーストもまた生っぽさ重視ですが、明るく女の子らしいキャラクターなのでそれらしい雰囲気になるように心がけています。
「私は昨日、遊園地に行きました。そこでクレープを食べたのですが、とてもおいしかったです」というセリフを例にしてみます。
これをチョコレイトボックスのさゆる風に言い換えると「うちね、昨日遊園地行ったんだ。そんでクレープ食べたんだけど、めっちゃおいしかった~」になります。
肩の力の抜けた話し方を意識しています。日常のちょっとした思い出を友人にシェアしているようなイメージです。落ち着いたテンションのキャラなので「行ったよ」ではなく「行ったんだ」という表現で少しクールさを出しつつも、「そんで」という砕けた口語表現でフレンドリーさを出せている……気がします。語尾を伸ばすときは「~」を使うことが多いです。ゆるい感じが出るからです。
ふたりきり登校班の舞穂子になると「わたし、昨日遊園地行った!それでさ、遊園地でさ、クレープ食べたんだけど、すごいおいしかったー」になります。
幼い子供の話し方を意識しています。自分に起きたいい出来事をよく知っている人に少し自慢を交えて報告しているようなイメージです。「遊園地行った!」でテンションの高さを出しつつ、そこで勢いがピークになってしまったので「それでさ、遊園地でさ、」と息切れ感を出すことで子供っぽさを出せている……気がします。語尾を伸ばすときは「ー」を使うことが多いです。「~」より素朴な印象になると思っています。
らぁちゃんとわたしのらぁちゃんだと「らぁね~、昨日遊園地行ってきたよ。そこでクレープ食べたんだけどね、これがもうめっちゃおいしかったの~!」です。
きゃぴきゃぴした話し方を意識しています。日常の思い出を友人にシェアしているイメージですが、さゆると比べると興奮度が高いです。「行ってきたよ」「おいしかったの」といったソフトな語尾、「これがもう」という強調表現などで朗らかな女子の感じを出せている……気がします。語尾を伸ばすときは「~」を使うことが多いです。この場合はやわらかさを出すためです。
私がこの生っぽさにこだわるのは、親近感を出したいからです。「~わよ」「~だぜ」「~でしてよ」「~なのじゃ」などのような特徴的な口調もとても魅力的で好きですが、そういった表現はそのままだとキャラクターを一段遠い存在に感じさせる気がしています。この子は創作物であるという意識が生まれる感じでしょうか。それ自体は悪いことではなく、むしろ独自の世界観や個性の強いキャラクターを表現するのに向いていると思います。ただ、私がこれらのゴーストで感じてほしいのは身近な日常なので、あえてゆるく砕けた「生っぽい」言葉にするのを心がけています。
私の中で、自作ゴーストの存在の仕方は2つの方向性に分かれています。バーチャル寄りの方向とフィクション寄りの方向です。
バーチャル寄りで存在しているゴーストは、「現実に肉体は持たないがそこに生きている」感があります。チョコレイトボックス、あなたを愛していますがこの傾向が強いです。
フィクション寄りで存在しているゴーストは、「現実にいない人物として物語の中で生きている」感があります。調子乗ってんじゃないわよ、魔女と聖女がこの傾向が強いです。
ふたりきり登校班、らぁちゃんとわたしに関しては2つの方向性の中間ほどにあります。
ユーザさんにはこのあたりの差は特に伝わっていないと思うのですが、私の中では結構違いがあり、トークを書くときにも反映されています。
バーチャル寄りのゴーストは、デスクトップの向こう側にいるユーザさんに向けてトークしています。彼女らに二次元と三次元の区別はついていなくても、いつも三次元のユーザさんを見ています。
フィクション寄りのゴーストは、仮想のユーザさんに向けてトークしています。彼女らに三次元のユーザさんは見えないので、デスクトップの中で仮のユーザさんの姿を見ています。
中間ほどのゴーストは、デスクトップの外のユーザさんと中のユーザさんを重ねてトークしています。彼女らは仮想のユーザさんを通して三次元のユーザさんを見ています。
表面的にはおそらくわからない違いですが、そんな意識でトークを書いています。
キャラクターを作り込むときのテクニックとして「キャラの履歴書を用意する」というのがよく挙げられています。年齢・性別・家族構成・経歴……などの項目を用意して埋めていく方法です。
私はこの手法でキャラを考えるのが苦手です。キャラの輪郭が定まってからならそういった項目は自然に埋まっていきますが、作り込みの段階でどういうキャラか決めるために大枠の設定を考えるということがあまり得意ではありません。
では私がキャラを作り込むときどうしているかというと、もっとラフで些細な部分について想像を膨らませます。パクチーが食べられそうか、美容師さんと会話するのは得意そうか、何歳から自分で爪切りできるようになってそうか、みかんの皮をどうやってむいていそうか……というようなどうでもいいことについて具体的にイメージしていくと、そのキャラが人間になる気がします。
この方法のメリットは、考えたことがトークになりやすいことです。トークを書くとき、履歴書で設定した「甘いものが好き」から作ってみよう、とするとさらにアイデアを考える手間がかかります。しかし、「ホットケーキを焼くのがやたら上手そうだ」「歯磨き粉がいちご味そうだ」「バニラエッセンスをなめたことがありそうだ」などの想像はそのままトークのアイデアになります。
キャラの造形がしっかり固まってからもこれらの想像は役に立つことが多いです。日常生活で自分の身に起きたことや見聞きした他人の話などを参考に、「このキャラだったらどうするか、どう感じるか」を思い浮かべる習慣をつけています。
以上でこの記事は終わりです。
明日と明後日の記事はあーるでぃーさんが担当されます。お楽しみに。
2024年12月10日公開